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攻め:
受け:



 寝入る準備をしながら、攻めは恋人のパジャマ姿を堪能していた。
 パジャマといっても、受けの着ているものは攻めの室内着である。体躯の大きい攻めに合わせたシャツだから、ひとまわり小さい受けが着れば、ずいぶんとルーズなものになる。──尻まで覆う攻めのシャツと、ハーフパンツがひざを超えて足を隠している受けの姿は、恋人の欲目を差し引いても大変可愛らしいと思う。
 受けは歯を磨いたあと、髪を乾かしはじめたようだった。ドライヤーの音が聞こえてきてすぐに、
「攻めさん、ちょっとこっちに」
「んー? なんです?」
 洗面所へ足を向ければ、受けがドライヤー片手に立っていた。気分がいいのか、少し笑ってる。
「そこに立っててくれます?」
「立っとるだけでいいの?」
「はい、そのままで」
 そういって受けは手のドライヤーを攻めに向けてきた。正しくいえば、攻めの髪の毛へ、である。
「なに、乾かしてくれるの?」
「ついでにです」
 受けは背伸びをして、攻めの髪を乾かしはじめた。
 おなじくらいの身長でも、ドライヤーを使うには腕を持ち上げつづけていないといけないのだから、結構大変だ。ふたりは約十二センチ差である、そもそもとして受けは背伸びをしないと攻めに追いつかないのに、ドライヤーを当てるとなれば、なおのこと大変だ。
 ドライヤーで攻めの髪を乾かそうと、背伸びしている受けはけなげで可愛い。ぴょこぴょこ伸び上がったりするのもまた、可愛い。
 しかし、それでは受けが大変だろう。攻めは思い立って、体をかがめてみた。受けとおなじ視線になるくらい大きく足を折り、受けの負担軽減に努めた。
「足、つらいくないですか?」
「受けさんだって、背伸びしてるの大変でしょ」
 受けの指が、やさしく攻めの髪をすきながらドライヤーで乾かしてくれる。自分ではここまで丁寧にすることがないから、ちょっと不思議な感覚だった。
 恋人のしなやかな指先が、頭皮をタッピングしたり、さらさらと髪を乾かしてくれるのを、攻めが目を閉じて堪能していると、急激に眠気が襲ってきた。噛み殺しきれないあくびが漏れる。
「眠いですか?」
 受けの声はやさしく、少し笑みを帯びていた。
「あなたの指が気持ちよすぎて、超眠くなる」
「ほんとに?」
「散髪するとき、ちょっとマッサージとかしてくれるじゃない? あれみたく、すっげー気持ちいい」
「ぼくはプロほどのテクニックは持ち合わせていませんよ」
「そうじゃなくて、──あなたがしてくれるから、嬉しいし眠くなっちゃうんやね」
 ドライヤーのスイッチが切れて、乾かし終わったことが分かる。まだ触れていてほしかったが、思いがけないスキンシップに攻めの気持ちは上向きになる。
 歯磨きも済ませ、ふたりそろってベッドへ向かう。先にベッドへ上がった攻めは、遅れて入ってきた受けの体を思い切り抱きしめた。
「──してもいい?」
「超眠いんじゃなかったんですか?」
 あきれたようにいいながら、受けは笑って攻めのことを抱きしめかえしてきた。それが答えだった。

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